2006-12-08から1日間の記事一覧

風と家と唇―大工原正樹『風俗の穴場』について―その3の2(井川耕一郎)

(3)ずれていく対立関係 ・さらに続きを見てみよう。チャコのチャコらしくない、冷静さを欠いた発言に真っ先に反応したのは、突然、庭に姿を現したユカだった(こうした思いがけないところからの登場はマンションという設定ではできなかったことだ)。「あ…

風と家と唇―大工原正樹『風俗の穴場』について―その3の1(井川耕一郎)

事件は立て続けに起こった。縁側にひっそりと腰かけて順番待ちをしていた客――彼は、チャコの家でヘルス嬢としてまた働くようになったみちるの父・勝呂であった。洋室に入ってきた勝呂を見て、みちるは部屋を飛び出し、トイレに閉じこもってしまう。一体、ど…

風と家と唇―大工原正樹『風俗の穴場』について―その2(井川耕一郎)

演出家にとって、シナリオにのれないというのは絶望的な状況だ。大工原は『風俗の穴場』のシナリオを何とか直そうとするが、これだ!という直しの方針はなかなか見えてこない。ところが、ロケハンのついでに立ち寄った築四十年はたっていそうな一軒家の中を…

風と家と唇―大工原正樹『風俗の穴場』について―その1(井川耕一郎)

テープを巻き戻したら、もう一度最初から見ることにしよう。そう思わせる何かが『風俗の穴場』にはある。だが、大工原正樹によると、この作品の準備期間中はトラブル続きだったらしい。シナリオの直しは難航し、脚本家と決裂した大工原は助監督と手分けして…

『風俗の穴場』解説(大工原正樹)

これは、実在のヘルス嬢兼マンガ家をモデルにした実話です。完成時は「ファッションヘルス天国2」という題名でシリーズ化を狙った続編でしたが、1作目が売れなかったとの理由で、完成から1年後の発売直前に「風俗の穴場」というタイトルに差し替えられまし…

『風俗の穴場』

1997年・74分 製作:ピンクパイナップル 製作協力:フィルムキッズ 監督:大工原正樹 脚本:山下久仁明 撮影:福沢正典 照明:赤津淳一 音楽:坂口博樹 出演:石川萌、長岡尚彦、児島巳佳、吉岡ちひろ、大久保了、外波山文明、廣瀬昌亮