『つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史』、ラピュタ阿佐ヶ谷で上映中(9月19日まで連日21時〜)

(この文章は『月刊シナリオ』2016年9月号に掲載されたものです)


「渡辺さん、さっき言ってましたね。『(秘)湯の街 夜のひとで』を撮っているとき、いつか映画が撮れなくなる日が来る……と思っていたって。売り出し中のこれからって監督が何でそんなことを考えるんですか?」
 二〇一〇年、私は「ピンク映画の巨匠」と呼ばれた男、渡辺護のドキュメンタリーを撮っていた。撮ろうと思った経緯は実にいいかげんなものだった。私の脚本で渡辺さんが監督することになっていたピンク映画が製作延期になってしまったのだ。
 渡辺さんの家にはよく遊びに行ったのだけれども、そのたび、渡辺さんは息つぎなしで自分の人生と映画についてしゃべりまくった。脱線また脱線の圧倒的な語り。しかし、聞いていてとても楽しい。この渡辺さんの「話芸」を記録しておこう。暇になった私はそう思ったのだ。
 けれども、撮っているうちに、欲というか悪意というか、想定外の何かが私の中に芽生えてきた。どうしてなのかは分からない。渡辺さんの語りを止めるような質問をしたら、どうなるんだろう……。そんなことを思いながら、冒頭の質問を発したのだった。
 私の質問に渡辺さんは一瞬かたまった。けれども、渡辺さんはじいっと考えてから、はぐらかすことなく誠実に答えてくれたのだった。その答を聞いて、私は負けたと思った。
 そんなふうにして撮った渡辺護自伝的ドキュメンタリーが、この夏、ラピュタ阿佐ヶ谷渡辺護特集で上映されます。ぜひご覧ください。


(『つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史』は9月19日(月)までラピュタ阿佐ヶ谷で上映中です。連日21時〜)
ラピュタ阿佐ヶ谷http://www.laputa-jp.com/laputa/program/watanabemamoru/