古澤健『making of LOVE』、ポレポレ東中野にてレイトショー公開!(8/29、8/31、9/2、9/4、9/6、9/8、9/10 21:10〜)



making of LOVE』について(古澤健


making of LOVE』という映画は、「映画監督ふるさわたけし」の撮影現場のメイキング映像、という見立てのフィクションです。当然というべきなのか、僕自身が「ふるさわたけし」役で出演して、悪目立ちしています。
なぜ、監督自ら出演しているのか。と問われても、実はうまく答えられる自信がありません。この数年内に撮った『古澤健のMっぽいの好き』『古澤健のMっぽいの大好き』という自主映画シリーズでは確かに出演していますが、それらはタイトル通り自分自身のキャラクターがテーマだったので、仕方なく……というか、まあ出演する必然性はあったのですが、今回の『making of LOVE』の場合、企画の段階で僕が出演する必然性などこれっぽっちもありませんでした。僕が出ることで予算の削減につながるわけでもないし。そもそも今回の企画の発想の出発点は『スプラッシュ』なので、バックステージものにする意図すら最初はなかったのですから。どうしてこうなったんだろう……。
まあ……一つ言えるのは、「コントロールしないようにしたい」ということはあったと思います。これまでの僕の映画は、「コントロールしようとしてコントロールしきれていない」という失敗を繰り返してきたように、自分では思っています。できないことをしようとして失敗するのであれば、最初からコントール不能の要素を意識的にぶちこんでしまおう、そう考えた……のかな、今回は。
僕が現場で監督としてしたことといえば、僕以外の俳優に対してただひたすら応援していただけです。ああしろ、こうしろ、なんて言う暇はありませんでしたから。「とにかくいい芝居してよ」と無責任なことを言うだけでした。
そのぶん、編集時にはじっくりと「観察」することができたと思います。
でも、そういえば、8ミリ映画を撮っていたときには、そんなふうに映画を作っていた(芝居に向き合っていた)ような気もします。自分が一切出演などせず。ではあの頃、二十歳前後の頃は、現場でも「観察」できていたのでしょうか。あの頃、僕は監督としてなにをしていたんだろう(あるいは、していなかったんだろう)。
ますます映画の作り方がわからなくなってきました。


古澤健の『making of LOVE』は、『青春H』シリーズの一本として、ポレポレ東中野でレイトショー公開されます(いまおかしんじの『ゴーストキス』と日替り上映。『making of LOVE』の上映日は、8/29、8/31、9/2、9/4、9/6、9/8、9/10)。


トークショーもあるとのこと。
ゲスト:8月31日(火)高橋ヨシキ、9月4日(土)黒沢清、9月6日(月)佐々木敦、9月8日(水)松江哲明、9月10日(金)鎮西尚一


・詳しい情報は以下のサイトをどうぞ。

『青春H』公式サイト:http://www.artport.co.jp/movie/seishun-h/top/top.html

ポレポレ東中野http://www.mmjp.or.jp/pole2/

『にゃんにゃんゾンビ村』(古澤健のブログ):http://d.hatena.ne.jp/Full2yn/


<コメント>


不思議だ。こんなヒロインを設定しながら出会い(再会?)の決定的な瞬間を描かないことや、若い二人の恋路を邪魔するフルサワ監督が主役より断然目立ってしまうイビツさが、少しもこの映画の瑕疵になっていない。構造的には恋愛ファンタジーの王道を行きながらちっともそう見えないのは、つまりこの映画の監督・古澤がフルサワ監督を他のどの登場人物よりも愛してしまったからだ。自分の分身を愛しながら、突き放してみせることにプロの技術を注いでいる――、注いではいるのだけれどどうしても自分が好きでたまらない気持ちの方が前面に出てしまう。そこが古澤本人そのままで、愛らしい。
――大工原正樹


「プロの映画監督の古澤です」と言って女の子の手を握りしめ、絶対に離そうとしないのを見て、ぷッと吹いてしまった。みんなに愛されたいと願っているのに、間違った努力ばかりしている残念な男。間違いに気づかず、ひとに嫉妬し、とんでもない暴走をする悲しい男。スクリーンに映る古澤健は演技しているのか、それとも地か。愛を求めて悪あがきする男を自作自演して、古澤健は自虐コメディの第一人者となった。実に素晴らしい!(だが、女性ファンはつくだろうか……)
――井川耕一郎