2008-01-01から1年間の記事一覧

福間健二『岡山の娘』について(4)(井川耕一郎)

『岡山の娘』には、2007年6月に岡山で行われた詩の朗読会のドキュメンタリー映像が入っている。 その朗読会で、みづき役の西脇裕美は詩人の北川透に、「文学をやるうえで一番重要なことは何ですか?」と質問するのだが、それに対して、北川透はこう答える。…

映芸マンスリーで渡辺護『喪服の未亡人 ほしいの…』を上映(11月26日(水)19時〜・シアター&カンパニー「COREDO」)

映画芸術の上映会「映芸マンスリー」で、渡辺護の『喪服の未亡人 ほしいの…』が上映されます(トークショーもあります)。 映芸マンスリー 11月26日(水)19:00〜 上映作品:『喪服の未亡人 ほしいの…』(DVD上映) トークショー:渡辺護(監督)、井川耕…

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映芸マンスリーで渡辺護『喪服の未亡人 ほしいの…』を上映(11月26日(水)19時〜・シアター&カンパニー「COREDO」 new!福間健二『岡山の娘』について(1)(2)(井川耕一郎)new!渡辺護の映画論「主観カット/客観カット」(3)(4)new!渡辺護…

福間健二『岡山の娘』について(3)(井川耕一郎)

(福間健二『岡山の娘』はポレポレ東中野で現在公開中です) 「つまり、母さんとあなたは、わたしをつくって殺そうとしたんだ――と、わたしは言えなかった」というみづきのナレーションのあと、映画は夕陽を映し、ゆっくりフェイドアウトする。 そして、字幕…

福間健二『岡山の娘』について(2)(井川耕一郎)

けれども、「これがわたしの人生です」と自信をもって物語ることなどできるものだろうか? そういえば、気になるシーンが映画のはじめの方にある。みづきを含む五人の女性たちに向かって、「なぜ岡山にいるのですか?」と尋ねるシーンがそれだ。 このシーン…

福間健二『岡山の娘』について(1)(井川耕一郎)

(福間健二『岡山の娘』はポレポレ東中野で現在公開中です) 映画が始まって七、八分たったくらいだろうか、友人の智子を後ろに乗せて自転車を走らせていたみづきは、ふいに自転車を乗り捨てると、ベンチに腰かけて呟く。「わたし、まだめんどくさい。ごめん…

渡辺護の映画論「主観カット/客観カット」(4)

1.小森白の『太平洋戦争と姫ゆり部隊』 パクさんと言えば、若松孝二が小森白の『太平洋戦争と姫ゆり部隊』の助監をやったときのことを『若松孝二・俺は手を汚す』(ダゲレオ出版)の中で書いてるね。 「大蔵貢が来て、『ヨーイ、スタート』って自分がいき…

渡辺護の映画論「主観カット/客観カット」(3)

(このインタビューは、2004年に公開された渡辺護監督作品『片目だけの恋』の宣伝サイトに掲載されたものです) 1.「アップ―フルショット」じゃなくて、「主観―客観」――渡辺さん、今までの話を整理して、ちょっと質問していいですか? 渡辺護「ああ、どう…

渡辺護の映画論「主観カット/客観カット」(2)

1.あのとき、おれにはチョクが神様に見えたね 昔、ダスティン・ホフマンとミア・ファロー主演で、『ジョンとメリー』という映画あった。朝、起きたら同じベッドに寝ていた男女の一日を描いたやつで、最後に互いに相手の名前を聞くところで終わる。そいつを…

渡辺護の映画論「主観カット/客観カット」(1)

(このインタビューは、2004年に公開された渡辺護監督作品『片目だけの恋』の宣伝サイトに掲載されたものです) 1.『アデルの恋の物語』、おれならどう撮るか? トリュフォーの『アデルの恋の物語』は封切りのときには見てないんだ。あの頃、おれは月に1…

伊藤大輔『丹下左膳』(井川耕一郎)

伊藤大輔が撮ったトーキー版『丹下左膳』。 45分ぶんの断片しか残っていないということだったけれども、 見てみると、出だしはかなり残っているようでした。 沢村国太郎演じる柳生源三郎が、司馬道場の娘との縁談がまとまり、江戸へ向かうところから映画は始…

伊藤大輔『この首一万石』(井川耕一郎)

(以下の文章は「プロジェクトINAZUMA」BBSに書いたものの再録です) 人入れ稼業の井筒屋の人足・権三(大川橋蔵)は、浪人の娘・千鶴(江利チエミ)と相思相愛の関係。 けれども、身分が違うから、一緒になることはできない。 ああ、生まれ変わってくる時に…

伊藤大輔『山を飛ぶ花笠』(井川耕一郎)

(以下の文章は「プロジェクトINAZUMA」BBSに書いたものの再録です) 渡辺護監督の伊藤大輔に関するインタビューをブログに載せたついでに、 今、フィルムセンターで上映している伊藤大輔作品についての感想をちょっとだけ書いてみようかな、と。 伊藤大輔は…

渡辺護、伊藤大輔を語る(3)−『薄桜記』、『御誂次郎吉格子』、『下郎の首』など−

そう言えば、『鞍馬天狗(横浜に現る)』に出てくる木の札は、造船所の通用門の手形なんだよ。そこに原健作演じる小原が爪で重要なメッセージを書いてるんだけど、これが木目や文字にじゃまされて読めない。 ところが、その爪で書いたメッセージが読める女が…

渡辺護、伊藤大輔を語る(2)−『雪之丞変化』と『鞍馬天狗』−

そりゃあ、『王将』は伊藤さんの代表作だ。ベスト10を選ぶとなったら、入れなくちゃいけない。でも、おれが好きな伊藤大輔は、名作を撮る伊藤大輔じゃないんだ。 同じバンツマ(阪東妻三郎)主演なら、『王将』より『おぼろ駕籠』や『大江戸五人男』の方にお…

渡辺護、伊藤大輔を語る(1)−渡辺護が選ぶ伊藤大輔ベスト10−

(このインタビューは、2004年に公開された渡辺護監督作品『片目だけの恋』の宣伝サイトに掲載されたものです。 現在、フィルムセンターで「生誕110年 スターと監督 大河内傳次郎と伊藤大輔」という特集上映が行われていますが、どの作品を見にいったらいい…

小出豊監督作品『こんなに暗い夜』のキャスト、スタッフ募集

以前、このブログでも紹介した『お城が見える』を撮った小出豊が、CO2の助成監督に選ばれ、長編映画を監督することになりました。 CO2公式サイト http://www.co2ex.org/kikakuseisaku/kantoku04.html 現在、キャスト、スタッフを募集中とのこと。 詳細…

「西山洋市」『吸血鬼ハンターの逆襲』(西山洋市)

監督:西山洋市 出演:中村愛美、上馬場健弘、西口浩一郎 <監督コメント>ぼくのはタイトルは仰々しいんですが内容は地味です。「運命人間」の続編のようにペット探偵が出てきて、美人依頼者の頼みで吸血コウモリを探します。吸血コウモリが依頼者の妹を襲…

第4回イメージリングス背徳映画祭で西山洋市の新作『吸血鬼ハンターの逆襲』を上映

西山洋市の新作『吸血鬼ハンターの逆襲』が、第4回イメージリングス背徳映画祭で上映されるそうです。 第4回イメージリングス背徳映画祭 〈平成二十年のヰタ・セクスアリス〉 10/16(THU)〜10/19(SUN) 10/23(THU)〜10/26(SUN) 会場:LA CAMERA 料金:1000円…

講演「溝口健二と成瀬巳喜男」(西山洋市)

今年の二月にこのブログで、西山洋市が溝口健二と成瀬巳喜男の演出についての講演を行うことをお知らせしましたが(「溝口と成瀬の演出の特徴は「長回し」でも「カット割り」でもない」(西山洋市))、 その講演の採録がアテネフランセ文化センターのHPに掲…

作品紹介(映画美学校セレクション2008)

映画美学校セレクション2008では、以前、このブログで紹介した3作品が上映されるそうです。 朝倉加葉子『ハートに火をつけて』(あらすじと監督コメント) 7月12日(土)、13日(日)上映川村清人『目のまえ』(あらすじと監督コメント) 7月14日(月…

映画美学校セレクション2008

映画美学校製作の作品が、「映画美学校セレクション2008」というタイトルで、ユーロスペースでレイトショー公開されるそうです(7月12日(土)〜18日(金)・連日21:00〜)。 7月12日(土)・13日(日) 『そこへ行く』 福井早野香監督(2007/16mm→DV…

上映情報

常本琢招の8mm映画『にっぽにーず・がーる』がフィルムセンターで上映されます(7月17日(木)14時)。 詳しくは、こちらをどうぞ。常本琢招の監督デビュー作『制服本番 おしえて!』、7月24日(木)まで中部で上映中(名古屋南映、刈谷大黒座2、半田日…

更新情報

『TOCHKA』と二つの固有名詞(松村浩行) new!映画美学校セレクション2008 new!遠山智子『アカイヒト』について(井川耕一郎) new!西尾孔志『ナショナルアンセム』について・1(井川耕一郎) new!西尾孔志『ナショナルアンセム』について・2(井川耕…

松村浩行についてもっと詳しく

<監督作品>『TOCHKA』について 松村浩行『TOCHKA』(あらすじと監督コメント) 『TOCHKA』と二つの固有名詞(松村浩行) 西尾孔志『おちょんちゃんの愛と冒険と革命』と松村浩行『TOCHKA』について(井川耕一郎)『YESMAN / NOMAN / MORE YESMAN』について…

『TOCHKA』(トーチカ)と二つの固有名詞(松村浩行)

『TOCHKA』の登場人物たちは皆、固有の名前を持たず、互いが互いを名前で呼ぶこともない。けれども、この映画には固有名詞が二つだけ登場する。 一つは、北海道の根室という地名。現ロシア領である北方四島を除けば、日本東端の町だ。 母親が国後島の生まれ…

西尾孔志『ナショナルアンセム』について・2(井川耕一郎)

前に書いた感想だと、 『ナショナルアンセム』の見どころはまち子だけみたいに見えてしまうけれど、 そんなことはない。 たとえば、まち子が風呂に入っている場面。 この場面には、まち子の姉の幻が出てくるのだけれど、 その幻は浴槽の縁に立っていて、 ゆ…

西尾孔志『ナショナルアンセム』について・1(井川耕一郎)

『ナショナルアンセム』には50人近い人が出演しているという。 とにかく、新たな登場人物が次々と出てきて、顔がおぼえきれない。 今、画面に映っているこの人は、前のあのシーンに出ていた人と同じ人なのかな? なんて考えながら見てしまうから、 あらすじ…

遠山智子『アカイヒト』について(井川耕一郎)

『アカイヒト』は、遠い昔、アジアのどこかの小国で、伝説を題材にして作られた映画みたいですね。 日本語字幕のついたフィルム断片が、最近、田舎の土蔵の中から発見され、 フィルムセンターが復元しました、 と言ってもおかしくないような感じです。 とこ…

『狂気の海』のカップリング作品について

<カップリング作品について>『YESMAN/NOMAN/MORE YESMAN』(松村浩行)『アカイヒト』(遠山智子)『阿呆論』(木村卓司)『お城が見える』(小出豊)『犬情』(粟津慶子)『さらば、愛しき女よ』(長島良江)『空の飴色』(浅野学志)の自作解説と批評は、こちら…