万田邦敏企画のオムニバス映画『13日の金曜日 ジャンルの命日』について+各篇の紹介
15人の映画監督による15ジャンルの短編オムニバス。
地獄に堕ちたジェイソンが幾度となく甦るがごとく、その死が懸念されて久しい映画は、ジャンルと共に何度でも復活する。21世紀に映画を生かすのはデジタル映像でも3D映像でもない。13日の金曜日・ジャンルの命日に帰ってくる映画の「画面」、それこそが死に瀕した映画に生き血を注ぐ。
おお、夕陽の映画たち、朝焼けのジャンルよ、明日に向かって呪われよ!
『13日の金曜日 ジャンルの命日』は、立教大学と映画美学校で講師を務める万田邦敏、西山洋市、井川耕一郎と立教の学生12人による短編オムニバス映画です。15人それぞれにひとつのジャンルが割り振られ、15本の「13日の金曜日」が出来上がりました。
各篇の紹介
1,ジャンル(タイトル)
2,スタッフ、キャスト
3,監督のコメント
※白組
○先鋒 山下洋助
1.サスペンス『血まみれの下着』
2.キャスト 植勝正 野上史えり 吉田譲
スタッフ 永井浩 内藤かすみ 入澤朱陽 瀬島真由
3.風に揺れる下着を盗もうとした男の下心がとんでもないことにまきこまれる話です。
○次鋒 吉田譲
1,スプラッタ
2,キャスト 坂井紀里子 佐藤憲太郎 万田邦敏
スタッフ 佐々木健太 鶴岡慧子 諏訪由子
3,秋子は根本の愛人で根本の研究旅行について来た。森に入って行く二人。秋子は自分たちの関係について不満を述べる。そこへ悪魔が忍び寄る。
○中堅 下山繁紀
1,任侠『大博奕』
2,キャスト 佐藤憲太郎 新保真生 和田誠也 山本翔二朗
スタッフ 八木下雄介 神尾龍彦 新保真生 山下洋助
3,13日の金曜日、大川組組長大川政明がバーベキュー大会にて対立組織室田組に襲撃された。大川政明は柳瀬川下流にて溺死体で発見され、これを期に抗争は激化、一般市民への被害を出す最悪の結果となった。警察の介入により手打ちが決まったが、それはどちらか一方が相手の傘下に入るという厳しいものだった。そしてそれは博奕によって決められることとなる…大川に世話になった乾十朗は立ち上がる、組の存亡をかけた大博奕
○副将 本田拓也
1,ラブコメ『恋人は殺人鬼』
2,キャスト 大瀬楓 中嶋健 鶴岡慧子
スタッフ 横内喬 西崎亘 島村卓弥 十河真奈美
3,ストーリー
別れることになった一組のカップル。夜明け前、男の家に荷物を取りにくる女。そして二人は別れてしよう。しかし女の子には秘密があって…
〇大将 万田邦敏
1,SF『SF夫婦刑事』
3,西暦80万2千7百1年、夫婦刑事は80万7百26才の誕生日を迎えようとしていた。ちょうどそのとき、月の哲学者が“ジャック”と名乗る殺人鬼に切り刻まれた。現場に残されたダイイング・メッセージは「立派」。19世紀の猟奇殺人犯が80万2千8世紀に甦ったのか。頑張れ、夫婦刑事! 何を頑張るのかわからないけど、頑張れ!
※赤組
○先鋒 馬場浩樹
1,アクション
2,キャスト 本田拓也 坂東佑亮 永井浩
スタッフ 田中康隆 永井浩
3,しがない大学生、松村はサークルの部室を友達の金田と掃除していた。するとなぜあったかわからない呪いの刀に金田は呪われてしまう。必死に抵抗し逃げる松村。しかし、のちに恐るべき反撃の機会が訪れたのであった…
○次鋒 加藤雄大
1,ミステリー『しょうじょう』
2,スタッフ 山下洋助
3,小学校三年生くらいの時でしょうか、家族で旅行に行ったことがあります。旅行先のことについては詳しく覚えていないんですが、ひとつだけとても印象に残っていることがありまして。夜、寝ている時のことです。夜中にふと目を覚ますと隣で寝ていた母がこちらを見ていました。印象に残っているというのは、この時の母の顔がとても不気味なものだったんですね。母はかなり大きな目の人で、その大きな目を一杯に開きながら瞬きひとつせず僕のほうをじいっと見つめ続けているわけです。幼い僕にとっては全く理解を超えたことだったので、何かが母に取り憑いてしまったんではないかとか、今まで母だと思っていたものは実は全然違うものだったんではないかとか、色々と恐ろしい考えが頭を巡りました。とても長い時間そうしていたような気がするのですが、結局その後僕が先に目を閉じたのか母が先に目を閉じたのかは覚えておりません。
撮影中、そんなことを思い出しておりました。
○中堅 北村亮
1,ミュージカル
2,キャスト 佐々木雄一 加藤梨花
スタッフ 北村俊樹 吉田譲 野堀俊宏
3,ミュージカルが嫌いな人が撮ったミュージカル映画?になったような気がします。
○副将 新保真生
1,青春社会派
2,キャスト 高原岳竜 山田由梨
スタッフ 野堀俊宏 下山繁紀 永井浩 入澤朱陽
3,映画監督を目指す青年、健は映画の撮影中に地震にあう。都市機能は麻痺し、映画の現場も中断したため健は田舎に帰省する。そこで健は幼なじみの真琴に再会する。
〇大将 井川耕一郎
1,追悼映画『玄関の女』
2,キャスト 本間幸子
スタッフ 松本岳大(撮影)、光地拓郎(録音)、北岡稔美(編集)
3, 万田邦敏さんから、13日の金曜日というお題でオムニバス映画を撮らないかというメールが来たのが、一月下旬。渡辺護さんのドキュメンタリーを撮影して一年ちょっと経った頃で、ああ、ひさびさにフィクションを撮ってみたいなあと思い、やりますと返信した。その後、一人一ジャンル担当するので、打ち合わせをやるとの連絡があったが、その日は用事があって欠席。まあ、残り物には福があるっていうし、などとのんびりかまえていたのだ。しかし、打ち合わせ結果のメールを読んで、しまった!と思った。十五人も参加するオムニバスだと、残り物のジャンルなんてあるわけがないのだ。さて、どうしたものか、と腕組みしていたら、ふとあるのかないのかよく分からない追悼映画というジャンル名が思い浮かんだ。たぶん、ずいぶんと世話になったひとが二人、亡くなっていたからだろう。一人は小寺学くん。本の編集者だった彼は、人間関係を面白く編集するひとでもあった。アニメーション作家の新谷尚之さんなどとの出会いは小寺くんなしではありえなかったろう。だが、酒好きな彼は近頃、体を悪くしていたようだった。十月のある晩、玄関で倒れ、亡くなった。一人暮らしだったから、発見されるまで数日かかった。もう一人は、フィルムキッズの社長だった千葉好二さん。千葉さんと出会わなければ、自分は脚本を書くことなどなかったろう。千葉さんのもとで育った人は何人もいる。だが、フィルムキッズが倒産したあとは、田舎にひっこみ、一人ひっそり暮らしていたらしい。一月のある晩、自宅に戻った千葉さんは心臓に痛みを感じて、救急車を呼んだのだが、間に合わなかった。小寺くんも、千葉さんも人間が大好きだったのに、最期は一人きりだった。それを思うと、後ろめたさを感じる。だから、追悼映画などと思ったのだろう。撮影をしたのは、三月五日。一週間後の十二日に完成予定だったのだが、ずいぶんと遅れた。そのうち、オムニバスの話も消えたようだった。やれやれ、デッドストックか。まあ、震災や原発の混乱の中、仕方ないよなあ、などと呟いていたのだが、先月、万田さんからオムニバスを完成させると連絡があって、おお!と思った。13日の金曜日で追悼映画とは、何とも罰あたりな冗談だったわけだが、小寺くんも千葉さんも許してくれたのか。追悼映画を追悼せずにすんだわけである。
※青組
○先鋒 大伴峻也
1,ラブストーリー『ストレート』
2,キャスト 真保友哉 瀬島真由
スタッフ 天野拓哉 小巻研 渡辺翔太
3,高校生の駆け落ちを、精一杯撮った作品です。
○次鋒 野堀俊宏
1,フィルムノワール『悪い仲間』
2,キャスト 鴨志田翔 高橋駿 新井まゆ子 中嶋健
スタッフ 佐々木健太 新保真生 松島翔平 島村卓哉
3,サイレント映画です。地下組織に所属している5人の男女。彼らの任務は極秘の情報を身の危険を侵してでも仲間に伝える事。清は仲間、茂らを引き連れて他の仲間が待つ場所に向かう。
そこには地下組織を撲滅しようとするマフィアが影をひそめ、そして仲間内でも嫉妬と裏切りが交錯しているのであった。
○中堅 高橋駿
1,教育『ザッヒェル=マゾッホへの手紙』
2, キャスト 加藤雄大
スタッフ 吉田譲
3,ひとは誰も、悲劇の主人公を演じているね
その目で見れば、ごらん
あそこをハムレットが気取った足どりでゆくよ
こっちにはリア王、あの娘はオフィーリアだし
こっちの娘はコーディリア。
イェーツ『ラピス・ラズリ』
そして、この映画の主人公はゼヴェリン(マゾッホ『毛皮を着たヴィーナス』の主人公)。
レオポルド・フォン•ザッヒェル=マゾッホに傾倒する文学青年、井越修二の話である。
大学4年生の修二はマゾッホの弟子を自称し、『ザッヒェル=マゾッホへの手紙』という卒業論文を執筆中である。彼は、未だ不当に扱われているマゾッホの文学作品と、マゾヒスムという名を救うため、ひとり奮闘している。
そんなある日、修二は、『毛皮を着たヴィーナス』の場面を模して撮影された、『ワンダ(ファニー・ピストール)に跪くゼヴェリン(マゾッホ)の写真』に「この世で最も美しいもの」のひとつを見いだす。
彼は、恋人の香織と共に、『ワンダ(香織)に跪くゼヴェリン(僕)の写真』を撮らなくてはならないという観念に囚われる。香織の友人であるギリシャ人の写真家に撮影を頼むことにするのだが…。
○副将 天野拓哉
1,スポ魂
2,キャスト 神尾龍彦 荒木伸幸 中嶋健 天野達也
スタッフ 大伴峻也 高橋駿 渡辺翔太 新保真生
3,ボクサーであるケンヂはスランプに陥っていた。そんなケンヂを厳しくも支えるトレーナーの荒木であるが、その荒木の元にケンヂを諦め、別の若手選手を見るように打診が来る。ケンヂも自身のボクサーとしての道に希望を見いだせずにいる。二人は多くを語らない、やるか、やられるか、全ては13日の金曜日に決する。
〇大将 西山洋市
1,西部劇『荒野のゴーストライター』
2,syutu-en:TakehiroUebaba,AkihiroKaita
en-syutu:YoichiNishiyama
3,This is Western movie.
And also Japanese “kaiki-eiga” too.
I know it’s only hybrid.
But I like it.