『迷蛾の灯』(第9期初等科修了製作)

心優しき殺人衝動!異才・長谷部大輔が独特の空気感で描く
現代の迷える人間哀歌!!

脚本・監督:長谷部大輔
キャスト:長谷部大輔/原田樹理/高橋洋/国沢実/坂本仁美/畑広太郎/少女/吉行由実
スタッフ:梶田豊土/太田衣緒/関力男/近藤結/岡部尚/金村英明/真下雅敏/桑子琢磨/山内麻莉
音楽:木形子


●最高気温を記録した夏の日。
君田は測量の仕事で老人・友島の家に行く。そこには友島の若妻で盲目の美女・麻理がいた。仕事を急ぐ君田を邪魔するように奇天烈な行動を繰り返す麻理。君田は困惑しつつも、そんな麻理に惹かれていく。しかし、意気揚々と帰宅した君田の目に映ったものは、愛犬みゆき(♀)と逞しい黒犬(♂)との激しい交尾の光景だった…。


〜『迷蛾の灯』の不思議について〜
『迷蛾の灯』は不思議な映画である。映画自体については、何が不思議か説明できない。なぜなら説明するための拠り所がこの映画には存在しないからだ。実際、観ていただくしか、この映画を伝える手段が無いのかもしれない。昭和を代表する名漫才師・花菱アチャコがもしこの映画を観たなら、きっと「むちゃくちゃでござりますがなぁ!」と言った事だろう。しかし、試写で観ていただいた方々の反応は概ね好評だったように思える。だから、だからこそ製作した一員として自信を持ってお勧めしたい、お勧めできる映画である。ストーリーなどはよくわからないかもしれない知れないけれど、おもしろい映画だと思う。     
他者の欲望を覗きみるおもしろさが、この映画にはきっとある。


さて、この映画はすべての登場人物が秀逸でおもしろい。
見事に監督・脚本・主演をなしとげた長谷部大輔の独特の世界を役者さんが体現している。
それはこの映画を観てもらって確認していただきたい。お願いします。


私たちにとって、なにより不思議なのは高橋洋さんが、国沢実さんが、そして吉行由実さんがこの映画にいることかもしれない。
そして、やはり不思議な出来事が多々あった。
高橋さんが本番前のテストのときに撮ったポラロイド写真に心霊らしきものが写っており、「高橋さん、何か写ってますよ!」とその写真を高橋さんに渡すと、高橋さんはしばらく見つめ「…ああ」と頷いた、その姿は最高にイカしていた。やはり!と思わずにいられなかった。
国沢さんに、役の設定年齢が70歳代で老けメイクをほどこすことを伝えたとき、国沢さんは「なんなら、歯を外しましょうか?頬が今よりもコケて、老人っぽくなると思いますよ」と松田優作ばりのノリでさらりと仰られ、驚くべきことに、実際に歯を外して本番撮影に臨まれた姿はカッコよかった。
吉行さんは今回、肌の露出が多く、事前にその旨を伝え、水着を持参していただいたのだが、当日、雰囲気がでないということで純白のパンティを買いに走られた。そのお姿は凛々しく素敵で詩情さえ溢れていた。そして、キャメラの前の吉行さんは最高に魅惑的で美しかった。


撮影中、不思議の世界にいる錯覚になんどもおちいった。


他にも、
あんなことやこんな事をされるのに出演を快諾していただいた主演女優の原田樹理さんも、不思議でかわいらしく、その魅力は確実にフィルムに焼きついている。
野宿生活者の次恵役の坂本仁美さんも独特の存在感を見事に、かもし出してくれた。
黒犬役の畑広太郎さんにはテーマソングとなる楽曲も提供していただいた。この映画の世界観を決定付けるホントにすばらしい楽曲だ。みなさんにも、ぜひ聴いてほしいです。


きっとこれは人間自体のおかしさが記録されているからおもしろい映画なんだろう。


リアルで不思議な世界を、おかしなおかしな人物たちが躍動する!
現代の迷える人間哀歌!!
9月9日、映画美学校映画祭にて目撃してください。
魂を揺さぶられる傑作に違いありません。

以上 文責・金村英明