フォッサマグナの向こう側(植岡喜晴)

 日本列島を中央で分断するフォッサマグナ大地溝帯)の西と東で、明らかに人種が異なるように、映画も、西から生まれたものと、東から生まれたものとでは、同じテーマを扱うにしても、ノリやテイストや取り組みがずいぶんと違ってくるもののようです。私の周辺にはそうした東の匂いを異様に毛嫌いするものがいますが、馬鹿な話だ。
 このプロジェクトで上映される4本の作品は、そのフォッサマグナの向こう側・東京で自主映画からスタートし、プロとなり、二十数年間映画と向き合ってきた作家たちが、プロの枠組みから離脱し、改めて映画と対決した、東のエーテルがギュッと凝縮されたような濃い作品群です。ここには、「眩暈がする」、「腰が抜ける」、「見たこともない」、「心、躍る」−−とても言葉では言い表せない、愛と痛みについての驚くべき描写や語りや表現が、蜜のようにギュッと詰まっています。西山洋市「INAZUMA 稲妻」、井川耕一郎「寝耳に水」の2作に至っては、フォッサマグナどころか地球さえ粉砕してしまいかねないノリと歌心が炸裂し、「新しい映画」の誕生を目撃することになります。


 大阪の人よ、
 たまには「東」に打ちのめされてみるのも良い経験ではないでしょうか?
 それも酔狂。


植岡喜晴:1954年兵庫県生まれ。主な監督作品に『夢で逢いましょう』(84)、『精霊のささやき』(87)、『月へ行く』(00)、『ルック・オブ・ラブ』(02)などがある。
『ルック・オブ・ラブ』公式サイトはこちら