[西山洋市]役に立つ山中貞雄(西山洋市)

 宮崎駿の『千と千尋の神隠し』は『丹下左膳余話・百万両の壷』に似ている。どちらもメルヘンだからだろうか?


 クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』は『河内山宗俊』に似ている。山中貞雄は『河内山』のプロットにジョン・フォードの『三悪人』を取り入れたそうだから、自然と似たのかもしれない。


 黒沢清の『トウキョウ・ソナタ』は『人情紙風船』に似ている。黒沢さんは山中貞雄の「逆手の手法」のような「いやだ」といっておいて次にはそれをやっているというような展開のさせ方を良くするからもともと山中貞雄が好きなのかもしれない。


 題名は思いつかないが、『戦国群盗傳』リメイク版は、ある種のマフィア物に似ている。アメリカ、イタリア、香港・・国籍は問わない普遍的な類似性だ。『ゴッドファーザー』もちょっと似ているが、コッポラは黒澤明(『戦国群盗傳』潤色)のファンだから当然かもしれない。最近の日本映画では『ゆれる』のドラマに一部類似したテーマが扱われていた。いや、似ている。


 山中の映画は「時代劇」だが、それは、古い昔の映画という意味ではない。山中の「時代」は必ず今、現在にアクティブに繋がっている。「現代劇」ではむろんないが、「現在進行系」の劇としてストレートに現代に繋がっているのだ。
 山中貞雄の映画が現代の最先端の映画のあれこれに似ているのは偶然ではない。山中貞雄の映画には、現代映画の最先端に繋がるテーマと物語の構造と演出における映画的な思考が詰め込まれているのだから。
 従って、山中貞雄の映画は、常に、今、見なければならない映画なのである。


 ラピュタ阿佐ヶ谷で、山中貞雄特集のレイトショーが始まりました。


5月30日(土)から6月5日(金)まで『丹下左膳余話・百万両の壷』
6月6日(土)から6月12日(金)まで『河内山宗俊
6月13日(土)から6月19日(金)まで『人情紙風船
6月20日(土)から6月26日(金)まで『戦国群盗傳』(リメイク版)
 連日21時上映開始です。
 また毎週土曜日には西山による山中貞雄についての講演が行われます。


 作品紹介等詳しくはラピュタ阿佐ヶ谷のホームページ、「役に立つ山中貞雄」のページをご覧ください。

 
 http://www.laputa-jp.com/laputa/program/yamanakasadao/


 また今週水曜日には、アテネフランセ文化センターで西山の最近作の短編3本が上映されます。
 上映作品は『INAZUMA稲妻』『死なば諸共』『吸血鬼ハンターの逆襲』(3本同時上映)。
 上映時間は、15時、17時、19時の3回。
 詳しくはアテネフランセ文化センターのホームページ、「映画の授業・現代映画篇」のページをご覧ください。


 http://www.athenee.net/culturalcenter/


 同じホームページの講演採録のページには映画研究家坂尻昌平さんによる「西山論」が載っています。参考にご覧ください。

 http://www.athenee.net/culturalcenter/special/special/sakajiri_n.html