「渡辺護自伝的ドキュメンタリー(全10部)」第3部〜第6部について(井川耕一郎)



(以下の文章は2013年10月8日の試写のときに配布したものです)


渡辺護自伝的ドキュメンタリー(全10部)」の第3部〜第6部は自作解説篇になる。
自作解説篇は渡辺護監督作品とのセット上映を前提としている(たとえば、『おんな地獄唄 尺八弁天』(70)+『渡辺護が語る自作解説 弁天の加代を撮る』といったように)。
また、上映作品だけでなく、関連する作品についての話も入れるようにした。渡辺護さんの200本以上ある作品群の中にどんな流れが見出せるのかを示したかったからである(関連作品のフィルムが発見され、上映できればいいのだけれども……)。


第3部『渡辺護が語る自作解説 弁天の加代を撮る』(30分)
第三部で話題となるのは、弁天の加代を主人公にしたシリーズの第一作『男ごろし 極悪弁天』(69)と、第二作『おんな地獄唄 尺八弁天』(70)。
ちなみに、弁天の加代ものには、第三作『濡れ弁天御開帳』がある(ただし、主演は香取環ではなく、林美樹)。また、女ヤクザものというふうに見方を広げれば、『観音開き 悪道女』(70)も関連があることになる。


第4部『渡辺護が語る自作解説 エロ事師を撮る』(30分)
『(秘)湯の街 夜のひとで』(70)について、渡辺護さんはすでに第二部『つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史』である程度詳しく語っている。そこで、第四部ではエロ事師たちを描いた他の映画――『男女和合術』(72)、『性姦未公開図』(74)との関連に注目することにした。
『男女和合術』、『性姦未公開図』は、『(秘)湯の街 夜のひとで』の変奏とも言える映画だが、性を客に見せる芸人たちを描いた作品の流れを考えれば、『シロクロ夫婦』(69)、『多淫な痴女』(73)、『おかきぞめ 新・花電車』(75)、『好色花でんしゃ』(81)などが視野に入ってくるだろう(『好色花でんしゃ』については自作解説篇をつくる予定)。


第5部『渡辺護が語る自作解説 緊縛ものを撮る(一) 拷問ものから緊縛ものへ』(35分)
「緊縛ものを撮る」は三部からなる。緊縛ものを例に、ジャンルがどのようにして生まれるのかを探ってみた。
第5部で主に語られる作品は、『谷ナオミ 縛る!』(77)と『少女を縛る!』(78)。
渡辺護の緊縛ものと言うと、『谷ナオミ 縛る!』、『少女縄化粧』(79)が有名だが、内容的に見て、『少女を縛る!』はきわめて重要な作品だと思う。緊縛ものという枠をはずしても、渡辺護の代表作の一本であると言えるのではないだろうか。


第6部『渡辺護が語る自作解説 緊縛ものを撮る(二) 処女作への回帰』(30分)
第6部で話題となるのは、日野繭子主演の『少女縄化粧』(79)。前半は2010年に映画美学校で行ったインタビュー、後半は2012年に銀座シネパトスで『少女縄化粧』上映後に行われたトークショーである。
ドキュメンタリーを撮っていく中で分かったことだが、この作品は渡辺護の監督デビュー作『あばずれ』(65)の緊縛時代劇版リメイクだった(『あばずれ』については、第一部『糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護』の後半で詳しく論じている)。
『あばずれ』のリメイクはもう一本ある――夏麗子主演の『変態SEX 私とろける』(81)。『あばずれ』のフィルムが発見され、三本立てで上映できれば面白いと思うのだが……。


自作解説篇で私たちが目指したものは、渡辺護の作家的特徴の早分かりではなかった。
映画監督・渡辺護の作家性は対話の中から生まれた――脚本家との、キャメラマンとの、役者との、観客との、今まで見てきた映画との、過去の自作との……対話から生まれ、磨かれていったのだ。
私たちはそんな対話の重要性を伝えることを目的にして自作解説篇をつくってみた。
対話の積み重ねこそ、歴史の真中を流れるものだ。
私たちの試みが少しでも、これからピンク映画史や日本映画史に取り組もうとする人たちの役に立てばいいのだが……。


出演・語り:渡辺護
製作:渡辺護、北岡稔美、撮影:松本岳大、井川耕一郎、録音:光地拓郎、編集:北岡稔美、構成補:矢部真弓、高橋淳、構成:井川耕一郎
協力:渡辺典子、新東宝映画株式会社、銀座シネパトス
太田耕耘キ(ぴんくりんく編集部)、林田義行(PG)、福原彰