西山朱子(千華)

「INAZUMA 稲妻」の妻は ツマハジキのツマよ〜♪
 私が演じた役、千華は、あらすじにあるような“嫉妬に狂ってふたりの関係に割って入る”女の子ではなく・…セリちゃんに花火を投げつけるといったちょっかいは出しますが、あれはもう功を奏す狙いはなく、困っちゃって参っちゃって声を上げただけで・…、誰かを傷つけることなく自壊してゆく女の子でした。
 それは私がそうやろうと目論んだものではなく、シナリオにそうあったので(…のに何故あらすじはそう書くのか。まぁそれはさて措き)、純情であるだけの「千華役を」、という要請は、ひゃ、畏れ多いことで。やんわり「ん〜…。無理があるのでは?」と辞退したら「やる前から出来ないなんて言うな!」と一喝され、「はい、わかりました」となりまして。で、純情というものに想いをめぐらせたら泣けちゃって。去ってゆく相手を引き戻す術を持たず、もう、ただ知る、ただ見る、千華の純情とはそういう行為だと思ったからです。
 千華は二人の戯れを徐々に知ってゆき、そこに交ぜてもらえず悲しみ、あがいて届かぬ声を上げ、最期までその戯れを見続ける…。そういう一途な道程がしっかり書いてあったシナリオに臨んだ私は、行動するにつれ深まる彼女の孤独を、遣る瀬なく抱えておりました。


西山朱子:今関朱子を改名。唐十郎に師事。舞台『ファンキー』(大人計画)、『愛の罰(再演)』(大人計画)出演、他。映画『YYK〜永遠の誤解』(監督:沖島勲)、『桶屋』(監督:西山洋市)、『稲妻ルーシー』(監督:西山洋市)出演、他。