『直したはず、なんだけどなあ』(大工原正樹×中矢名男人)

 昨日、8期の中矢名男人くんから(『out of our tree』の監督)「1stCut ver.2005のサイトの更新が事情により大幅に遅れているので、掲載予定だったインタビューを載せてほしい」とのメールが来ました。
 というわけで、3週間ほどこのブログは休む予定だったのですが、急遽、中矢くんから送られてきた原稿を掲載することにします。
 原稿は、中矢くんがインタビュアーとなって、講師の大工原正樹に8期フィクション科1stCutの4作品について尋ねたことをまとめたものです。


 生徒の作品に対するアドバイスの仕方は、講師によってちがっていて、生徒から聞いた話によると、万田邦敏さんの場合は、問題点を一つ一つ丁寧に指摘したうえで、どう直していくべきかを明快明晰に論じていくのだとか。
 私(井川)の場合は、怠け者なので、感想を書いたメモを配布して、「言いたいことはメモに書いてあるから。じゃあ、さっさと呑み会にしよう」というふうになってしまう。
 大工原さんの場合は生徒の言い分をとにかく聞く。そうして、どんなにつまらない質問でも、その一つ一つにきちんと答え、生徒と一緒に考えていくという方法らしい。
 おそらく、批評の言葉ではなく、人柄で指導するといった感じなのでしょう。
 思い返してみると、大工原さんのクラスから1stCutに選ばれる作品には、どういうわけか水に対する親和性とでもいうべきものがあって、かならず海や川が出てくる(過去の作品では小嶋洋平の『海を探す』。http://www.1st-cut.com/2003/)。そうして、登場人物はその水に体をひたしたいという欲望にかられるのだけれど、あの海や川には、どこか大工原正樹のおおらかで誠実な人柄が反映しているのかもしれません。


 それにしても、インタビューを読んで思ったのは、「批評めいたことをひとまえで言うのは苦手だし、偉そうに見えるからイヤだ」という大工原さんから、よくこれだけ聞きだしたものだということです。これは中矢名男人の手腕というしかありません。(井川)


『直したはず、なんだけどなあ』(大工原正樹×中矢名男人)
1 『out of our tree』について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p2
2 1stCutの選考について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p3
3 『水の睡り』について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p4
4 『底無』について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p5
5 『バオバブのけじめ』について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p6


(なお、ネタバレ部分も含むこのインタビューの完全版は、6月10日頃に、1stCut ver.2005(http://www.1st-cut.com/index.html)に掲載される予定です)