『直したはず、なんだけどなあ』1(『out of our tree』(中矢名男人)について)

<『out of our tree』あらすじ>
孤独な男の子、彼を殺そうとする母親、催眠術に囚われた少女、ヒロインを探す二人の映画青年、そして彼らを監視する謎の男…互いに互いを探し、互いに互いを見失いながら、彼らは光の中をさまよっていく。


大工原:選考についてとか、初等科時代のこととかは、なかなか覚えていないことが多いんだよね。作品についてのことが中心になるけどいいかな?
―――はい、よろしくお願い致します。
大工原:まず、『out of our tree』だけど・・・中矢くんは、主人公のあおいのイメージはこんな感じだったの? こういう、ふわっとした喋り方とか。
―――シナリオの段階では確固たるイメージがなかったというのが正直なところですね。キャスティングを決定する段階では納得して選びましたが。
大工原:そうか。謎の男役についてはどう? 選考の時に見せてもらったビデオ課題では、あの役は小嶋くん(『底無』監督)が演じていたよね。
―――そうです。小嶋くんも候補の一人でしたが、さすがに監督兼任でやってくれとはなかなか(笑)。でも、中舘さんはイメージどおりのキャスティングでした。
大工原:僕はあの役を、中矢くんの講師である井川(耕一郎)さんで勝手にイメージしていたんだな。多分、中矢くんたちから見た井川さん像ってあんなんだろうなと。井川さん本人にそのことを言ったら、「大工原さんは、僕をそういう風に見ていたのか」ってショックを受けていたけどね。(笑)。で、あおいについても、勝手なイメージというわけではないけど、驚いたわけなんだよ。ちょっとつかみにくい。
―――大工原さんはどんな女の子をイメージしていたんでしょうか?
大工原:もっと明瞭で、でも鈍感な女の子、というイメージだね。僕は中矢くんの班と松浦くんの班のシナリオ検討会に参加したわけだけど、中矢くんのシナリオはお話を推進していく太い幹みたいなものが前半を終わるまでつかみにくかったんだな。登場人物やテーマが多くてね。実際に作品を観てみると、力を色々なところに入れ過ぎちゃったのが分かる。もっと主人公が引っ張っていくようにホン直しをしなきゃきついなと考えたわけだよ。で、決定稿で、まあ大丈夫かなと。それで出来上がったのを観たら、あれっ?と(笑)。
―――主役のイメージが違う。
大工原:違うというのもあるけど、それ以上に演出が出来ていないんだな。例えば、地下室のシーン。あそこはクライマックスのはずなんだけど、クライマックスになっていない。朋子の話を聞いていたあおいが、「やめてっ!」と叫ぶんだけど、その痛みが伝わってこない。絵に力が入って、役者に入ってない。
―――そうですね。あのシーンは朋子がスクリーンの向こうに行ってしまうという仕掛けがありますから、それをどういう風に撮るかばかりに頭がいってましたね。
大工原:それにしても、朋子に対するあおいのリアクションをきちんと描いていないといけない。あおいに寄り添う形で、この話がどういう話なのかを見せていかないと。なのに、肝心のあおいの動きというのが記憶に残っていない。記憶に残っていないのは何故かというと、撮っていないからだよ。ポイントでの動きを押さえていない。
―――まったくそのとおりです。
大工原:まあ、あおいを追いかける2人組はよかったと思うよ。いい組合せだね。
―――岡田役の西口くんは最初のビデオ課題からずっと演じてくれていましたし、シナリオも半ばアテ書きしたところもあったので申し分ないです。工藤役の宇根くんもよかったです。互いに異なるキャラクターでしたから。