『直したはず、なんだけどなあ』2(1stCutの選考について)

大工原:しかし、4本並べてみると、中矢くんの作品の異質さは際立つね。ともすりゃ、他の3作品は区別がつかなくなっちゃうから(笑)。
―――選考のときには、そういった作品のバランスというのも重視されるのでしょうか?
大工原:最後の1本にどれを選ぼうかというときには考えるね。ただ、バランスという考え方だと、シナリオ本位ではなくなってしまう。それでは書いてきた生徒に対して悪いよね。だから、まず「嘘」がないシナリオを選ぶ。
―――「嘘がない」とは?
大工原:本気度、切実さ、とでも言ったらいいのかな。さすがに、それは選考する人たちの間でもばらつきはないんだよ。「嘘」があるかどうかというのは分かる。後は、シナリオの世界観に強く興味を惹かれるものを一押しにしていくわけだね。
―――当然、各講師で世界観も異なりますから、自然にシナリオ選考でもバランスが出来てくる。
大工原:それがいちばん真実に近いんじゃないかな。選ばれた作品は、どれも必要なものは揃っている。キーになるイメージとか、人物の配置とかね。つまり、シナリオを直せば映画にできるだろうという判断がついた作品なんだよ。
―――それが「嘘」のないということなんでしょうね。