西山洋市

『INAZUMA稲妻』以後(西山洋市)

プロジェクトINAZUMAで『INAZUMA稲妻』が上映されてから何年たったでしょうか? 光陰矢のごとし、稲妻のごとし。 あのとき、下北沢で『INAZUMA稲妻』を見てくださった皆様、お久しぶりです。 『INAZUMA稲妻』の後、ぼくは『死なば諸共』、『スパイ昇天』『吸…

「勝手に逃げろ!」(『大脱出!〜脱出ゲームTHE MOVIE』〜)短編映画のことを考える(西山洋市)

小説家に長編が得意な人もいれば短編が得意な人もいてちゃんと認められているように(本屋に行けば「短編集」が長編に負けないくらいたくさん売られている)、映画にも短編が得意な人がいるんではないだろうか。しかし、いまのところ商業的な劇映画のスタン…

第4回イメージリングス背徳映画祭で西山洋市の新作『吸血鬼ハンターの逆襲』を上映

西山洋市の新作『吸血鬼ハンターの逆襲』が、第4回イメージリングス背徳映画祭で上映されるそうです。 第4回イメージリングス背徳映画祭 〈平成二十年のヰタ・セクスアリス〉 10/16(THU)〜10/19(SUN) 10/23(THU)〜10/26(SUN) 会場:LA CAMERA 料金:1000円…

講演「溝口健二と成瀬巳喜男」(西山洋市)

今年の二月にこのブログで、西山洋市が溝口健二と成瀬巳喜男の演出についての講演を行うことをお知らせしましたが(「溝口と成瀬の演出の特徴は「長回し」でも「カット割り」でもない」(西山洋市))、 その講演の採録がアテネフランセ文化センターのHPに掲…

溝口と成瀬の演出の特徴は「長回し」でも「カット割り」でもない(西山洋市)

溝口と成瀬の演出の特徴は「長回し」でも「カット割り」でもない。人物の背中の使い方にこそあるのだという仮説に基づいて、実際にいくつかのシーンを見ながら、ふたりの演出の本質について考えたい。溝口健二の長回し、成瀬巳喜男の端正で的確なカット割り…

井川耕一郎への返信(その1)(西山洋市)

返事が遅れてすみません*1。 僕は記憶力がよくないので、昔のことを思い出し思い出ししているうちに時間が過ぎてしまいました。とりあえず、思い出したことだけです。 8mmで自主製作映画を撮っていたときの出演者は友人や知人や知人のまた知人をちょっと…

『のぞき屋稼業・恥辱の盗撮』で描かれなかった顔についてみんなに聞きたい(西山洋市)

これは、変質的な盗撮魔の生態を描くエロ映画、ではない。探偵映画だ。主人公の探偵は、浮気調査のために尾行などをする自分の仕事を卑下して「のぞき屋」だと言っている。それに、彼はかつて実際に本格的な「のぞき」をやっていたらしく、その頃の盗み撮り…

大工原正樹の『未亡人誘惑下宿』から演出のコンセプトを掘り返す(西山洋市)

この映画は設定や筋立てから、一見、マンガ「めぞん一刻」風の「ラブコメディ」に見えるかもしれないが、通常想定される「ラブコメディ」の世界観とは違うコンセプトによって男女の関係を描いている。まず、簡単に言ってこの映画は「ラブストーリー」ではな…

『西みがき』の演技の演出について(西山洋市)

『西みがき』の出演者たちの演技は一見「ナチュラル」に見えるかもしれない。だが、実は『西みがき』はいわゆる「ナチュラル」を指向してはいない。出演者たちの演技は、ある出来事を「再現してみせる」ことのフィクション性を指向しているように僕には見え…

『死なば諸共』について(西山洋市)

「江戸」とは地名であると同時に時代も示している。「吉原」とは江戸幕府公認の遊郭の名称である。遊郭には遊女がいて、契りを交わした男がいる。そこで起こるのは恋愛事件であり、心中沙汰である。 ところで、今、「時代劇」と言えば、江戸時代以前の出来事…

永遠の5月23日(2)

西山洋市 「私の感情」を利用するというのは「メソッド演技」の方法のひとつですね。「役の感情」を掴むために自分の「感情の記憶」を探ってゆくというようなアプローチだと思うのですが、そういうことを深く突き詰めてゆくと「頭の中の開けていない部分が開…

永遠の5月23日(高橋洋・西山洋市・片桐絵梨子)

来週あたり、ブログを再開しようと思うのですが、その前に5月23日のコメント欄を本文に再録しておくことにします。演出や演技をめぐってなかなか興味深い議論が展開されているのですが、一体、この議論はいつまで続くのか……それは誰にも分かりません。(井…

『INAZUMA 稲妻』のシナリオの作り方(西山洋市)

「INAZUMA 稲妻」の脚本は映画美学校7期高等科の片桐絵梨子に書いてもらったものですが、その元ネタとなった企画自体は僕が提示したものでした。僕が提示した企画は、A4の用紙で1ページ半ほどの大雑把なプロットです。プロットというのは、脚本の…

『INAZUMA 稲妻』について(井川耕一郎)

『映画芸術』NO.414(特集「2005年日本映画ベストテンワーストテン」)に書いた文章です。(井川) 『赤猫』(大工原正樹)10点 『INAZUMA 稲妻』(西山洋市)10点 『赤猫』については、阿部嘉昭が的確な批評(『日本映画の21世紀がはじまる』に収録…