大工原正樹

大工原正樹の『未亡人誘惑下宿』から演出のコンセプトを掘り返す(西山洋市)

この映画は設定や筋立てから、一見、マンガ「めぞん一刻」風の「ラブコメディ」に見えるかもしれないが、通常想定される「ラブコメディ」の世界観とは違うコンセプトによって男女の関係を描いている。まず、簡単に言ってこの映画は「ラブストーリー」ではな…

『未亡人誘惑下宿』解説(大工原正樹)

これは、山本晋也監督によって多く撮られ、ピンク映画では長らく人気だった定番シリーズ『未亡人下宿』のリメイクです(言わずと知れた「未亡人下宿」なのですが、周りの若い人で「未亡人下宿」はおろか「未亡人」や「下宿」の意味すらも知らない人が結構い…

『未亡人誘惑下宿』

1996年・74分 製作:ピンクパイナップル、製作協力:フィルムキッズ 監督:大工原正樹 脚本:藤岡美暢、撮影:福沢正典 出演:岩崎静子 斉藤陽一郎 コンタキンテ 武田有造 元気安 北山雅康

回り道をして家に帰る―大工原正樹『六本木隷嬢クラブ』について―(井川耕一郎)

明日、夫が出張から戻ってきたら、手作りケーキで結婚一周年を祝うことにしよう。そう考えた若妻(若菜忍)はケーキの材料を買いに出かけるのだが、その帰り道、意識を失いかけている女性(立花粧子)を見かける。若妻は自分のバッグを枕にして彼女をベンチ…

『六本木隷嬢クラブ』解説(大工原正樹)

どういう経緯で撮れることになったのかよく覚えていないのですが、88年の夏ごろ、にっかつの買い取り作品が「エクセス」という新しいレーベルで制作されることになってすぐに、「1本撮らないか」という話になりました。その前年、セカンドでついていたロッポ…

『六本木隷嬢クラブ』

1989年・63分 製作:フィルムキッズ 配給:エクセス 監督:大工原正樹 脚本:村上修 撮影:福沢正典 音楽:うさうさ(小中千昭+八木橋K也) 出演:若菜忍、徳井優、叶順子、立花粧子、草井正吾、清水大敬

大工原正樹――「大きな男」((代筆)常本琢招)

監督・大工原正樹の、その「人となり」について書け。 古くからの知り合いだという理由で、俺に回ってきたオハチ。確かに付き合いは長いが、実は大工原について、もっとも精確に、かつ愛情を持って書けるのは、大工原と俺の共通の先輩である、監督の鎮西尚一…

「夏祭@映美」によせて(大工原正樹)

「シネマGOラウンド」を初めて観たとき、ヘトヘトになった。上映時間はせいぜい2時間強。しかし、この2時間を体験するくらいなら、「旅芸人の記録」と「1900年」を続けて観るほうがずっと楽だ。オムニバス映画という体裁で上映されることが多いらしいのだ…

『直したはず、なんだけどなあ』5(『バオバブのけじめ』(松浦博直)について)

<『バオバブのけじめ』あらすじ> 大学生の和夫は東京で一人暮らし、そこに高校生の弟洋と父政義が田舎からやってきた。失踪した和夫たちの母親を探すためだ。三人は神奈川の海岸沿いに向かうが、叔父の目撃談だけで他にたいした手掛かりもなく、政義は息子…

『直したはず、なんだけどなあ』4(『底無』(小嶋健作)について)

<『底無』あらすじ> 塾講師の田辺は、平山という生徒がイジメを受けているのではないかと疑う。平山が隠し持っていたナイフを偶然手に入れた田辺は、事の真相を確かめるため平山の家に行く。だが平山は平然と田辺にナイフを譲ると言う。 ―――小嶋くんは大工…

『直したはず、なんだけどなあ』3(『水の睡り』(栩兼拓磨)について)

<『水の睡り』あらすじ> それまで暮らした家からアパートに引っ越した義男は、音信不通だった姉、陽子と再会し、共に暮らし始める。穏やかな生活が始まるかに見えたが、義男は悪夢に襲われるようになり、二人は過去の記憶が眠る、川の上流へと向かう。 大…

『直したはず、なんだけどなあ』2(1stCutの選考について)

大工原:しかし、4本並べてみると、中矢くんの作品の異質さは際立つね。ともすりゃ、他の3作品は区別がつかなくなっちゃうから(笑)。 ―――選考のときには、そういった作品のバランスというのも重視されるのでしょうか? 大工原:最後の1本にどれを選ぼうか…

『直したはず、なんだけどなあ』1(『out of our tree』(中矢名男人)について)

<『out of our tree』あらすじ> 孤独な男の子、彼を殺そうとする母親、催眠術に囚われた少女、ヒロインを探す二人の映画青年、そして彼らを監視する謎の男…互いに互いを探し、互いに互いを見失いながら、彼らは光の中をさまよっていく。 大工原:選考につ…

『直したはず、なんだけどなあ』(大工原正樹×中矢名男人)

昨日、8期の中矢名男人くんから(『out of our tree』の監督)「1stCut ver.2005のサイトの更新が事情により大幅に遅れているので、掲載予定だったインタビューを載せてほしい」とのメールが来ました。 というわけで、3週間ほどこのブログは…

『INAZUMA 稲妻』について(大工原正樹)

井川さんへ(前文略) ところで昨日、『INAZUMA 稲妻』をついに観ました。 信じられないような綱渡りを見事にやり切っていますね。 映画が始まった瞬間から、何か大変な試みを西山さんはやろうとしているのだ、という気配がビンビンと伝わってきて、…

『赤猫』について(大工原正樹、井川耕一郎)

以下の文章は、一昨年の映画美学校映画祭で『赤猫』が上映されたときに、無料配布したパンフレットに掲載されたもの。 ちなみに、パンフレットの表紙には6期生・三好紗恵(『赤猫』の制作を担当)さんが次のような宣伝コピーを書いていた。 「赤猫」とは、…